Vanishing Droplets in a River by Mari Minato
移ろいゆく世界と人々の営み
Top Photo:Utsuwa | 2019 | Painting on building’s façade | Paint on glass block and film (pigment, acrylic) Approximate drawingarea 870m²(30×29m)
©Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès
パリを拠点に制作をするアーティスト 湊茉莉の展覧会「うつろひ、たゆたひといとなみ」が、銀座メゾンエルメス フォーラムにて、6月23日(日)まで開催中。
鮮やかな色彩を用いた抽象的なモチーフを、壁面や建築物に筆で直接描くスタイルで知られる、湊茉莉。
湊は、「人はなぜ絵を描き始めたのか」という命題について、欧州文化の礎となったケルトやガリア、古代ローマなどの先住民族の文化をリサーチし、さまざまな文明の起源を遡りながら、歴史の中で人々によって共有された、あるいは忘れ去られてしまった事柄の痕跡や記憶の歪みを再び浮かび上がらせてきた。
その制作は、大胆で即興的な身振りを思わせるペインティングを特徴としていながら、実際は制作する地で目にした風物を描きとめたスケッチをもとに、綿密なリサーチを伴った観察から出発している。
2006年の渡仏以降、湊は主にフランスを中心に個展やグループ展にて作品を発表し、近年ではネッケル小児病院やパリ国際大学都市のカフェテリアなどに常設の壁画も手掛けてきた。
Installationview, Hojo, Through the Ages | 2019 | Aluminium foil, silver foil, acrylic, water and pigment color on fabric
©Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès
Installationview, Hojo, Through the Ages | 2019 | Aluminium foil, silver foil, acrylic, water and pigment color on fabric
©Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès
Installationview, Hojo, Through the Ages | 2019 | Aluminium foil, silver foil, acrylic, water and pigment color on fabric
©Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès
Installationview, Hojo, Through the Ages | 2019 | Aluminium foil, silver foil, acrylic, water and pigment color on fabric
©Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès
Installationview, Tsukiyomi (Moon reading) | 2019 | Wood panel, aluminium foil, hydrate lime | Dimensions variable
©Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès
Utsuwa | 2019 | Painting on building’s façade | Paint on glass block and film (pigment, acrylic) Approximate drawingarea 870m²(30×29m)
©Nacása & Partners Inc. / Courtesy of Fondation d’entreprise Hermès
「うつろいゆく世界と人々の営み」が表現された今展は、通常のギャラリー展示に加え、メゾンエルメスのガラスブロックのファサードにも絵画を描き、建物の内外で変化する時間や光の流れを描き出すという、初めての試み。
ファサードに描かれる「Utsuwa(器)」は、人類の文明に深く関わる「器」の普遍的な存在と、時間や光の変化と共存しながら周囲の環境を受け入れてゆくガラスの建物のイメージから発想された。
表面のオレンジやピンクの色(光)は、東から西へ移動して、ガラスブロックの水を湛えたような瑞々しい表面や光の様子をさらに浮き上がらせ、その輝きはフォーラムの内側にも赤味を帯びた光を導く。
インスタレーションに用いられた蛍光色のもとになる、蛍石フルオライトの英語名「fluorite」は、「流れる」という意味のラテン語「fluere」に由来しており、外側と内側のインスタレーションによる「筆跡・色(光)・生命のながれ」と呼応したイメージとして、内側には「襞、文明の河のながれ」のイメージが重ねられている。
ギャラリーでは、黄河文明から、メソポタミア、エジプト、イスラムといった異なる文明や文化の中で重要な役割を担っていた、いくつかのモチーフに焦点を当てた作品を展示。
石やテラコッタ、骨、鉄、陶などでできた彫像やお守りなど宗教に関わるものや、器や道具といった日常生活品などのリサーチから見出される相互の文化の混合や交流が、人類学的な視点から重なり合う襞のような構造で表されている。
人々が住まいを作り、建物や自然を標としながら移動し、束の間の定住を繰り返してきた古代の時間へゆっくりと想いを馳せた瞑想的な作品は、どのような歴史の事柄を映し出し、どのような痕跡を残してゆくのかを鑑賞者に問いかける。
心惹かれる鮮明な彩りで可視化された、移ろいゆく時の流れを感じて。
GINZA MAISON HERMÈS 03-3569-3300
【Vanishing Droplets in a River by Mari Minato】
DATE:6月23日(日)まで開催中
※ファサードペインティング「Utsuwa」は6月2日(日)まで
TIME:11:00am~8:00pm ※日曜日は7:00pmまで(入場は閉館の30分前まで)
PLACE:銀座メゾンエルメス フォーラム
ADDRESS:東京都中央区銀座5-4-1 8階
ADMISSION FREE
WEBSITE:www.hermes.com
- Art&Culture
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